吃音漫画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」を吃音者がレビュー【ネタバレ少】

最近のコメント

コメントなし

乞音症
この記事は約6分で読めます。
ひきにく
ひきにく

今回は押見修造さんの漫画志乃ちゃんは自分の名前が言えないを本当に自分の名前が言えない吃音者である僕がレビューしていこうと思います

少しネタバレを含みますので、まず作品を読みその後、気が向いたらこの記事を読むと楽しめると思います!

吃音症者の行動や表情をよく捉えている。

僕はこの漫画の存在を知りすぐKindleで買い読み、ボロ泣きした後に、文庫版も買いました

共感指数がとても高い作品でした

その中でもこれは共感できるという仕草や表情、気持ちなどが作中に散りばめられていまして、それはそれはもう胸に来るものがあります

その中でも吃音症を抱える主人公である「大島 志乃」への共感ポイントを紹介します

自己紹介の練習

吃音症者の大半は自分の名前が言えずに日々悩みながら生きています

自己紹介が何よりも嫌な時間なのですが、本番で上手く自己紹介ができるように「おおしま…しの…です」と

  • 自分の名前を言う練習をする姿になによりも共感します

吃っている時の表情と仕草

吃音症者は言葉が中々出てこない時に、無理やり勢いに任せて言葉を発そうとするので無意識に

  • 表情が強張ること
  • 体に力が入ってしまうこと

があります

この漫画では志乃のそういった細かな言動が自己紹介や、思ったことを話せない場面で描かれています

絵からその志乃の葛藤・苦しみが伝わってきて心が痛いです

歌は歌える

物語の序盤から中盤にかけて友達である加代ちゃんと「しのかよ」という音楽ユニットを結成します

そこで志乃はボーカルを務めることになるのですが、歌ではつっかえることなく流暢に歌える様子が描かれています

会話は左脳、歌は右脳と言われる様に、使っている脳の回路が違うからか、僕も歌は吃ることなく歌えます

本当に不思議ですよね

吃音症者は左脳の回路に問題があるということなんでしょうか?

  • 歌は吃ることなく歌える

日常会話を歌うようにして話す「スムーズスピーチ」という吃音症の治療法もあるみたいです。

緊張しなければ吃りにくい

吃音症は心との結びつきが強い障害なので、緊張は一番の敵です

なので、緊張さえしなければスラスラ話すことができることも吃音症の特徴です

志乃がスラスラと独り言を話している場面や、仲良くなった加代との間では吃らずに話せる場面など心の底から共感してしまいました

吃音症の認知度の低さが表れている

作中で志乃が上手く話せないことに対して

  • 斜め上のアドバイスする先生や親
  • 志乃を馬鹿にしてからかう生徒の菊池

無神経な対応をしてくる人が存在します

吃音症の認知度の低さを表現しているのかな?と感じました

あとがきで押見先生があえて「吃音」や「どもり」という言葉は使わないようにしたと書かれています

これまで生きてきた中で僕が吃った時に笑う人や、「変な話し方だね。」と言う人はいても「もしかして吃音症?」と聞いてくる人はいませんでした

失礼で聞けないだけかもしれませんが

さらに言うと、僕以外で吃音症の人に出会ったことがありません

とにかくそうそう!吃音症って認知度低いだよ!と思わず頷きました

吃音症者が思っていることを全て代弁してくれる

作中後半の文化祭のシーンで友達の加代ちゃんが弾き語りを発表するシーンがあるんですが、その歌を聴いて志乃の感情が爆発します

そこでは

  • どうして話せない?どうして自分だけ?悔しいということ
  • 話せないことで笑われるのが怖いということ
  • 人と話さなければ、関わらなければ苦しい思いはしないから自分に嘘をつき逃げていること
  • そんな自分を一番恥ずかしいと思っているのは自分自身であるということ

という僕がずっと吃音症で悩んできたことを、見事に代弁してくれています

このシーンを読むだけで涙が出ますね

吃音症者の心の奥底に深く刺さるシーンです

主要な人物3人がそれぞれ悩みを抱えている

この漫画は吃音がテーマなんですが、実は主要人物である3人がそれぞれ悩みを抱えています。

そんな3人の悩みを図にしてみました。菊池だけ名前がわかりませんでした…

人物悩み悩みに対する行動
大島 志乃吃音これまで自らが吃音であることを隠し続けてきたが

文化祭で全てをぶちまける

岡崎 加代音痴笑われる覚悟で文化祭で一人でステージに立ち歌う
菊池無神経傷つけてしまった志乃に謝る

3人がそれぞれに悩みを抱えて、その悩みに対して立ち向かっていく姿には感動を覚えます。

恐らく押見先生が吃音症である自分だけが悩んでいるのではなく、誰もがもがき苦しみながら生きているんだよということを伝えたかったのではないでしょうか?

どうして自分だけ?と感傷していても前には進めませんからね

まとめ

あとがきで作者の押見先生自身も吃音症であることがわかるんですが、そこで

  • 吃音症だったからこそ人の気持ちの変化に敏感になれた

と述べています

というのも吃音症者は常に「上手く話せなかったらどうしよう…」だとか

うまく話せなかったことに対し変な風に思われないかな…」という風に

人にどう思われているかということを異常に気にして生きています

  • それ故自然に相手の表情や仕草を機敏に読み取る力が付くのだ
  • そしてその力を漫画にも活かせている

と述べています

押見先生の発言通り吃音症者の僕がこの漫画を読んで一番に思ったことは

絵の表現力、破壊力がすごいということです

志乃の感情の変化による微妙な表情や仕草を書くのが上手いので余計に主人公の気持ちになりきって読めます

だから何度読み返しても涙が溢れるという

最終的にハッピーエンドでこの漫画は結末を向かえます

ハッピーエンドに対し「自分の青春はそんなに明るく瑞々しいものではなかった、気に入らない」レビューが見受けられます

実際吃音が原因でいじめに発展することも絶対にありますから美談で終わるのはどうなの?という見方も頷けます

ひきにく
ひきにく

個人的には物語でくらいハッピーエンドで救われたって良いじゃないかと思いますが…

 

最近子どもがうまく話せなくなってきた

彼・彼女・友達が吃音症なんだよね

という身近に吃音症者がいるという方に読んでもらいたいです

読めば上手く話せない、人と関わりたがらない、話を途中でやめてしまう理由がわかると思うからです

僕はこの本に出会い、無理やり母に読ませたところ

「今まで吃音で悩んでいたことは知っていたけど、こんなに苦しみながら生きているとは知らなかった。理解出来ていなかった。正直泣いてしまった」

という旨の長文メッセージが届きました

それくらい

  • 吃音症のこと
  • 吃音症者のこと

を上手く表現している破壊力のある作品なので是非読んでみてください

タイトルとURLをコピーしました